古書店が、好きだ。
はじめて古本屋さんで買い物をしたのは、確か小学3年生の時だったと思う。
手に入れたのは手塚治虫の「ブラックジャック」の単行本だったと記憶している。当時僕は手塚治虫先生(あえて先生と呼ぼう)に傾倒しており、その全作品を子供部屋の本棚に並べるべく、せっせとお小遣いを貯めていた。
小学生にとって、新刊の漫画本はけっして安い買い物ではない。最初はそんな経済的な理由だったかもしれないが、気がつけば僕は駅近くにある古本屋さんの常連になっていた。週に2−3回は顔を出し、棚の品揃えが変化しているかをチェックする。そのうち店主のおっちゃんも僕の顔を覚えて、「**入ったで(大野は関西生まれ)」なんて教えてくれるようになった。
大人になり、数冊の古書を買うのに逡巡しないほどのお金を手に入れるようになってからも、僕の古書店巡りは続いた。20代の頃は、週末になると近くの街にある3軒の古書店を順々に物色するのがお決まりだった。お気に入りの喫茶店でその日の戦利品をテーブルに積み上げ、ゆっくりとコーヒーを飲みながら書物に没頭するのが、大好きな時間だった。
それから少しずつ年齢を重ね、以前のように足繁く古書店に通うことはなくなったけれど、今でも街中で古書店を見かけるとつい覗いてみたい誘惑に駆られる。
古書店、それも小さなお店であるほど、店主の趣味・嗜好が色濃く反映されている。店主のパーソナルな好みや「この本面白いよ」という空気が書棚から感じられて、親密な気持ちになる。本棚を覗くことは、他人の頭の中をちょっと覗かせてもらうのと似ている。書棚とは持ち主の読書遍歴の記録であり、その人間の思考を形作ってきた土壌そのものだと思うからだ。
そして書棚を順に目で追っていくうち、ふと一冊の本に目に止まる。その出会いは大概、意識の外側からやってくる。探していたわけではなく、そこで初めて出会って「面白そう」と興味を引くタイトル。手にとって頁をめくり、更に興味を募らせる。予定調和の探し物ではなく、予期せぬ突然の「出会い」が好きで、僕は古書店に惹きつけられる。
この重苦しいコロナの日々を抜け出せたら、久しぶりに古書店に行きたい。
一日も早く、その日が来ることを祈って。
書き手:大野耕作
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