本品堂のデザインとは
伝統的であり、グラフィカルであり、歴史的である「大人が持ちたいかわいらしさ」
デザインをする上で大野が考えているのは、機械には引けない「丸みのある線」、人が作った「手の温度が伝わる線」で形を作ることです。
大野が好きな美術作品からの影響や、そもそもかつて文様の図案がそのような手仕事で作られてきたことへの敬意が背景にあります。
安易に古典をトレースすることはせず、形や線ひとつ作るのにも「この文様の本質とは?」「どうすれば文様の魅力を感じてもらえるか?」と大いに悩みながら作り上げます。
写実から図案になる表現の飛躍に関心がある、と大野は言います。
たとえば、燕を燕たらしめているものはなんだろう? 雀とはどう違うんだろうと考える。遠くから見たら同じ「鳥」ですが近くからだとまるで違う形をしてることがわかります。
あるいは菖蒲。実際はもっと複雑な形の花弁ですが、それを十字で表すというクリエイティブな跳躍をさせる。これは群としての菖蒲の形を限界まで単純化したものといえます。
このようにミクロとマクロの視点を組み合わせながら、対象の本質を選び取るようにデザインをし、かわいらしくも漫画やキャラクターにならないギリギリの「デフォルメ」を目指しています。
そこに文様の意味が乗ることで、伝統的であり、グラフィカルであり、歴史的な意味が込められていて……という幾層ものレイヤーが重なった、本品堂らしい「大人が持ちたいかわいらしさ」があるアイテムが誕生します。
そして、最も大切にしているのは次の点です。
そういうものを、日常で使うということ
文様は「古いものだから良い」のではありません。またわたしたちは「途絶えてしまいそうだから守っている」のでもありません。
文様は現代でもなお、そのデザインや意味するものが素敵であることが良いのです。
たとえば、日常の持ち物で好きな色や好きな形、好きな素材があるように「好きな文様」もありうると思っています。本品堂のアイテムは、そうして日々使ってもらうためにあります。
本品堂の「守袋」をデザインを気に入ってくれる人もいれば、文様の意味を含めて持ち歩きたいと使う人もいます。「ハンケチ」も同様です。
デザインでも意味でも構わないので、自分にとって心地よくなるもの、気分をプラスに変えるものとして文様を日常で使ってほしい。色や形や素材のように、好きな文様を探して選んでほしい。それが文様に携わるわたしたちの願いです。