本縫い座布団のはなし
「座布団」というアイコン
法要でお坊さんが座っている姿。
笑点で山田くんが運んでいる姿。
はてまた大相撲の番狂わせで宙を飛び交う姿。
日本の「座の伝統文化」を象徴する道具として、みんなが知っている座布団。イメージとしてはすごく身近な道具。なのに自分自身の暮らしにはぜんぜん身近じゃない。
このイメージと現実のギャップが、ポンピン堂でお座布団を作り始めたきっかけの一つだった。僕は当時座布団なんて持っていなかったし、買おうと考えた事もなかった。友達から「ねえねえ、この間買った座布団がさぁ…」なんて話も聞いた事が無い。よく考えてみたら、自宅に座布団を持っている人ってどれくらいいるんだろうか?
そんな事を考えようになったきっかけは、とある百貨店バイヤーさんからの一本の連絡だった。
通常の2倍量の中綿をつかっているため、このふっくらとした厚み。
「ポンピン堂で、お座布団作ってみない?」
このバイヤーさん、少々口は悪い人だがとっても勘が鋭い。ポンピン堂が駆け出しの頃からお世話になっており、モノの本質を見抜く眼力には、僕たちも全幅の信頼を置いていた。
「ポンピン堂でお座布団作ったら、すごく素敵なのが出来ると思うんだけど」
ところが相方の工藤(妻)の反応は渋いものだった。「えー座布団…なんか実家で小さい頃からずっと見てきたから…なんで座布団なの…?」型染め屋に生まれ育った工藤は、小さい頃から伝統的な文物に囲まれてきた。そんな彼女にとって「座布団」は日本の古くからある情景の一部で、今さら改めて製品として手掛けるようなイメージが湧かないーという事だった。
一方、僕はといえば西洋的な文物を好む家庭で育ったため、座布団にはあまり馴染みがなく、むしろ新鮮だった。そもそも座布団ってどこで売ってるんだろう? 専門的な「お座布団屋さん」というのがあるんだろうか…? 色々調べてみると、商品として市場に出回っている数自体が少ないことが判った。なるほど、売ってないから欲しがる人が少ないのか、それとも需要がないから売っていないのか…?でも逆に現代の人たちが心ときめくようなお座布団は無いんだろうか?
千鳥(萌黄色)の小座布団を、小さなちゃぶ台の前に置いて